おいしい時間 【2016.12.06】

新年の古き良き習わし お屠蘇(おとそ)のお話

新年の古き良き習わし お屠蘇(おとそ)のお話

いよいよ12月に入りました。
身の周りもにわかにバタバタし始め、そろそろ新しい年を迎える準備にも取りかかる頃ですね。
 
新しい年を迎えてお正月に飲まれてきたお酒といえば「お屠蘇」
うきうきとした正月の気分をあらわす言葉に、「おとそきぶん」という言葉があるように、日本には元旦の朝、家族一同がそろって屠蘇酒を飲む風習があります。
名前だけなら聞いたことあるという方も多いかと思いますが、実際にはどんなものなのでしょうか?
  
新しい年をお迎えする前に、今回は日本のお正月の古き良き風習、お屠蘇についてのおはなしです。

  
  

・お屠蘇とは?

 

お屠蘇とは、日本酒やみりんで生薬を浸けこんだ一種の薬草酒です。
邪気を払い無病長寿を祈り、心身ともに改まろう、という願いを込めて飲む、お正月ならではのお酒です。
  

「屠蘇」という言葉には「邪気を屠(ほふ)り、魂を蘇らせる」という意味があります(悪鬼を屠り、死者を蘇らせる)。
なので元旦にお屠蘇を飲むと、その年の邪気を除き、家庭健康で幸福を迎えると言い伝えられてるのですね。平安時代に中国(唐)から日本に伝わったといわれており、嵯峨天皇の頃に宮中の正月行事として始められ、江戸時代には一般に広まりました。
  
正式には「屠蘇散(とそさん)」といい、十種類近くの生薬を合わせたものです。
この生薬を、日本酒やみりんに浸して、成分を抽出したものが「お屠蘇」という薬草酒になります。

  
 
  
 

・どんな生薬が入ってるの?
  

 


「屠蘇散」の中身は、いわゆる漢方薬に使われる生薬です。多いと約10種類、一般販売されている屠蘇散には、5〜6種類が配合されています。代表的な生薬は「防風(ボウフウ)」「山椒(サンショウ)」「肉桂(ニッケイ)」「桔梗(キキョウ)」「白朮(ビャクジュツ)」「大黄(ダイオウ)」「桂皮(ケイヒ)」など。
  

白朮(ビャクジュツ)
キク科オケラまたはオオバナオケラの根
利尿作用、健胃作用、鎮静作用
山椒(サンショウ)
サンショウの実
健胃作用、抗菌作用
桔梗(キキョウ)
キキョウの根
鎮咳去啖作用、鎮静・沈痛作用
肉桂(ニッケイ)
ニッケイの樹皮、シナモン
健胃作用、発汗・解熱作用、鎮静・鎮痙作用
防風(ボウフウ)
セリ科ボウフウの根
発汗・解熱作用、抗炎症作用

  

無病長寿を願って飲むだけあって、さすが、の中身。
こうしてみると、胃腸の働きを盛んにし、血行をよくし、風邪を引かないようにする生薬が含まれているようです。
当然、酒やみりんにはブドウ糖や必須アミノ酸、ビタミン類も多く含まれていますし、さらにアルコールが血行を促進させます。
  

※生薬的には上記の効能がありますが、お屠蘇として飲む場合は盃に三杯程度なので量的には食用の範囲医療効果はありません。また、持病がある方の大量摂取には注意が必要です。

  
  
  

・お屠蘇のつくり方

  

現代のお正月では日本酒をそのままお屠蘇として用いることも多いようですが、機会があればご家庭で作ってみてはいかがでしょうか?
上記のような生薬を一から用意するのは大変ですが、屠蘇散として調合されたものがこの時期薬局などで購入できますので簡単に作ることができます。

  

〇用意するもの
  

 屠蘇散 ・・・ドラッグストアやスーパーなどで1包200円前後で手に入ります。
  年末に日本酒や本みりんを買うと、屠蘇散が付いてくることもあります。
 日本酒 ・・・ぜひおいしい日本酒で。
 本みりん ・・・料理用のみりんだと塩分が入っている場合があるので、本みりんを使います。

  素材が勝負。上質な本みりんや日本酒を選ぶことが大切です。
  
〇つくり方とポイント
  

  1. 1.酒と本みりん合計300mlに、屠蘇散を浸します。
    酒を多くすると辛口な仕上がりに、本みりんの割合が多いと 甘口でまろやかな味わいになります。
      
  2. 2.抽出が終わったら屠蘇散を取り出します。
    屠蘇散の説明書きを参考に確認し、出来上がり時間から逆算して作り始めてください。 抽出時間が長すぎると、濁ったり沈殿物が出たりすることがあります。 抽出時間は、平均して5時間~8時間が一般的です。

   
 大晦日の夜中に浸して元旦の朝に取り出せば、ちょうどころ合いになりますね(^^)

  
  
  

 ・お屠蘇の作法・飲み方

  


〇お屠蘇を飲む前に

  

お屠蘇を飲む前には必ず若水(元日の朝に汲んだ、その年初めての水の意)で手を清め、神棚や仏壇を拝み、家族が揃ったら新年のあいさつを済ませます。お屠蘇はおせちを食べる前にいただきます。

 

〇飲み方

 

正式には屠蘇器という主に漆塗りのお銚子と三段重ねの盃でいただくのですが、現代の一般家庭にはなかなか無いものだと思います。
ご家庭にある酒器や茶器などの中でお気に入りのものをお使いください。
お銚子に正月飾りや水引飾りをつけると、年神さまが下りる目印になるとされています。
 
 
  
お作法も地域や家庭によって異なりますが、一般的な作法は以下のようになります。
 
 
1.家族そろって東の方角を向きます。
 
2.最年長者が、最年少者に注ぎます。
たいていの宴席では、年長者から盃を下げていきますが、このお屠蘇ばかりは逆なのです。年少者から年長者へと盃を順にすすめます。
これは毒見の名残と、若者の生気を年長者へ渡すという意味が込められてるみたいです。
   
3.「一人これを飲めば一家くるしみなく、一家これを飲めば一里病なし」と唱えます。
 
4.厄年の人は、最後に飲みます。
  

家族皆が無事に新年を迎え年神さまをお迎えできたことを心から慶び、またこの一年を健康に過ごせるよう願いを込めて飲み交わされてきたのです。
また元旦だけでなく、三が日の来客時に、初献(最初の一杯)にお屠蘇をすすめて新年のお祝いの挨拶を交すのが礼儀だったようです。
 
 
 
師走を走り抜ければ 新しい年はもうすぐそこに。

お正月には大切な人達と一緒に、輝かしい新年を迎える慶びを酌み交わしてみませんか?

参考:日本酒造組合中央会HP

福田 裕子
久保田 桐子Kiriko Kubota
コラム「おいしい時間」担当

<ふくい地産地消コーディネーター/野菜ソムリエ>
福井県立大学 経済学部卒業後、一般企業に就職するが、「食の大切さを伝えたい」との思いから退職。伝統郷土料理や地元生産者とのやり取りを学ぶ。
その後、カフェのキッチンシェフとして、開店立ち上げから飲食メニュー全般を手がける。地元食材を使っての商品開発や、ホテル、レストラン、飲食店へ福井の食材を使ったレシピを提案。『禅野菜そうす』や『海幸山幸せんべい』などを手がける。
2012年、創業100年になる鯖江の久保田酒店4代目と結婚。老舗酒店の若女将となる。
現在は野菜ソムリエ、フードコーディネータとして、執筆や講演も多数。

[公式ブログ] http://ameblo.jp/kiripaulownia/

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