GOKAN -五感- 【2015.04.01】

冬から春へのおしつらえ

冬から春へのおしつらえ

冬のある来客の折、
なにか心も体も暖まるしつらえはできないものかと、もてなし膳を作りました。
お膳には越前和紙で作った白い椿の花を飾り、その横に 土の中から緑が芽吹く様子をイメージさせる 餡と抹茶をつかった生落雁を添えました。和紙の花と菓子とで、冬から春に移り変わるさまを感じることができる趣向です。和紙の花の花芯には柚子の精油(アロマテラピーで使うエッセンシャルオイルのこと)を染み込ませました。


日本生まれの柚子の精油は、古くから和食などに使用されてきた食材が原料であることからその風味や香りは馴染み深く、年代を問わず好まれています。
江戸時代頃から冬に柚子湯に入る習慣があり 今でも受け継がれていますが、これは邪気を払い、冬に風邪を引かないようにという先人の知恵によるものです。
実際に柚子に含まれるリモネンという成分は血行を促進し、新陳代謝を活発にして体を温める働きがありますので、風邪予防の理にかなっています。
また自律神経に作用し、イライラした気持ちを落ち着かせたり落ち込んだ気持ちを明るく前向きにしてくれるなど、リラクゼーションをもたらしてくれる素晴らしい働きもあります。


そして春になり桜の季節に移り変わり、おもてなしの設えも寒椿から桜へ。


桜は見て楽しむだけではなく、葉や花を塩漬けして食べることから、和ハーブと解釈することもできます。
西洋ハーブでいうと女性のためのハーブとも称される「ローズ」と効果が似ていて、元気がないとき、自信がないときに癒しと活力をくれます。桜にはクマリンという成分が含まれていてこれは通常、生の状態では糖と結合した配糖体という状態のため香りがしませんが塩漬けすることにより変化して、例えば桜餅や桜茶を口に含んだときに感じるあの麗しい香りになるわけです。
クマリンには強力な殺菌作用、リラックス作用や二日酔いの予防、血圧を下げてくれたり、咳どめに役立つ働きをもつといわれています。

先人たちは菓子や料理として食卓に取り入れることによって、情感として季節を愛でると同時に、体のバランスを整えるための一助として暮らしの中に自然の知恵を活かしてきました。西洋ハーブが注目され重宝される昨今、私もそれら知識を仕事として教える立場にありますが、日本の植物には日本人の生活に即した力が脈々と備わり私たちを身近で優しく支えてくれているということもお伝えしていけたらいいなと思うわけです。


滝川クリステルさんのスピーチで脚光を浴びた「おもてなし」という言葉。それは本来、一時的なブームとして存在するものではなく、人が人と関わりながら生きていく上で日本人が大切にしてきた相手を思いやる心配りを今に伝える言葉です。



お客様から「センスがないので、おもてなしといってもどうしてよいかわからない」「どんなふうにすることがおもてなしなのかわからない」といったお悩みや御質問をいただきます。
おもてなしに明確なルールがあるわけではありませんから、つい難しいもののように考えてしまいますよね。お気持ち、よくわかります。

こういった御質問にお答えをさせていただくとき思い出すのが、私自身の幼いころの出来事です。
当時の私は体があまり丈夫ではなく、入院したり学校を休むことが度々ありました。楽しみにしていた春の遠足の日も体調が悪かった私は、1人悲しい気持ちで自宅の布団で横になりながら過ごしていました。

そんなとき母は、サンドイッチや有り合わせの食材で料理を作り、家中のカゴやお弁当箱を集めて それらを詰めると、部屋の中央にラグを敷き、ピクニックのしつらえをして私を招き入れてくれました。ラグの上にはピンク色の折り紙で作られた無数の桜の花びらが散らしてあり、その場所にだけ春が訪れてくれたようで、悲しかった気持ちが和らぎ、心が晴れたものでした。


私が「おもてなし」を考えるとき、この景色や、幼いながらに感じた心の変化を指針にしています。
テーブルコーディネートや色彩感覚も含め、多くの勉強をしてきましたが、大切なことは、専門の知識に彩られた敷居の高いテクニックよりも、相手を思いやる気持ちだと信じているからです。
お客様をおもてなしするときも、商品開発や店舗・イベントの空間デザインを手がけるときも、その場を訪れた人の気持ちが今よりほんの少しでも安らぐように、ささやかな驚きや柔軟な発想が日常生活の糧になるように、そのことをひたすらに大切にあたため、形にしています。

この連載では、四季の移ろいを おもてなしの表現にとりいれる仕方や、私が素敵だと感じたテーブルウエア、お取り寄せ品、実際にお客様をお迎えしたときのコーディネート実例、毎日の暮らしに彩りをそえる知恵や工夫などを御紹介しながら、ちょっとした気配り心配りで 普段の生活が豊かになる、そんなお手伝いができたらと思っています。
よろしくお願いします。

道廣 喜子Kiko Michihiro
「GOKAN」担当

<Salon LAKSHMI(サロン ラクシュミー)代表/料理家・美容家>
公的機関の医療者として精神科とNST分野に携わりながら、インファント(乳幼児)マッサージや世界各国の美容技術、アロマテラピー、美容食学、薬膳インストラクターといった美容と食にまつわる国際ライセンスを多数取得。
様々な知識を軸にサロン・スクールを立ち上げ独立する。
『生まれてから死を迎えるまで、医・美・食の調和がとれたサービスと知識の提供』をコンセプトに 広い世代に向けた香育・食育・触育の講演活動、専門学校にて解剖生理学・栄養学講師をつとめる。飲食店やイベントにおけるフードスタイリングやディレクション、空間デザインをてがけるほか、メディアにてレシピ提供やコラムの執筆もおこなう。
不定期開催されるワークショップは即時満席となる人気の企画となっている

[公式ブログ] http://ameblo.jp/lakshmi-aroma/?frm_id=v.jpameblo
[ホームページ] https://kikokitchen.amebaownd.com/

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