ボディ&ヘルス 【2018.03.23】

働く喜びが、人生を豊かにする!

働く喜びが、人生を豊かにする!

「福井は周回遅れのトップランナー」という新聞記事を、私が読んだのは2010年のことでした。そして、ちょうどそのころ出会ったのが、当サイトの運営者でもあり(株)ドリームワークスを立ち上げたばかりの山内喜代美氏でした。


東京から著名な文化人を招き、何か事を起こそうと勢いのある彼女の存在を知り、興味と応援の気持ちをもってメールをお送りしたのが、馴れ初めでした。福井もまだまだ捨てたもんじゃないという気持ちでした。

     
そして2018年。人生100年時代。日本の長寿社会は世界的にみても人類未知の領域が到来しています。そのなかで「福井は間違いなく日本の最前線であり、ここのモデルが日本のモデルになる、福井は間違いなくこの分野でトップレベルの研究地だ」とおっしゃっているのが、東京大学高齢社会総合研究機構の辻哲夫特任教授です。


最前線で気がついた取り組みが、日本を変える」

そう、はっきりとおっしゃっていたのが印象的でした。


福井県と東京大学は、高齢者の方々が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる社会の実現にむけて、ジェロントロジー(総合長寿学と福井では訳す)共同研究を平成21年から行っています。3月22日、福井県国際交流会館で、第Ⅲ期研究中間報告会がありました。


医師からは、在宅ケア(医療、介護の地域連携と仕組みづくり)のための調査報告があり、医師同士「困ったときはお互いさま」、「ルールではなく手順を決めること」が大事だと言っていたのが印象的でした。数々の調査やディスカッションをもとに熟考された発表を通じて、ガチガチな取り決めでは、けっして制度を長続きさせることは出来ないと言うご意見がありました。


また、県の担当課長からは、主治医やかかりつけ医など、多忙な中で地域医療を支えている、医師自身の労働生活の質(Quality of Work life)をまず確保することが大事であるということが言われていました。たしかに、支える人が健康でなければ、みなを助けることなどできません。Quality of Work life があってこそ、Quality of Lifeがある。働く喜びが、人生の質を決める、人生を豊かにするとも言えそうです。

(福井の由来は「福居」つまり福の居るところですからね♡)

    


福井県の「つながりの力」が健康と未来をつくる


福井県は三世帯同居率が日本で最も高い県です。地域社会で、人とのゆるやかな関係をつなぎ続ける体制が、いまだ残っています。つながりの力が、健康格差のない社会を作ります。福井の子どもの学力・体力が、毎年全国トップレベルを保ち続けているのも、こうした格差のすくない地域特性が影響しているのではないでしょうか。福井は親の経済・健康状態が子どもに影響するリスクが小さい地域なのだと言えます。

※健康格差と社会的つながりについてはこちらが参考になります

現代新書×WEBメディア7媒体『健康格差 あなたの寿命は社会が決める』全文公開プロジェクト

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53493 


また、親の代がやってきた地元での役やお世話を、自分たちの代で続けることについても「あたりまえ」という感覚があります(少なくとも、今はまだ)。



母親クラブ、壮年会に婦人会、老人会など、地域の組織が、今も私の住むところには残っています。衰退しつつも残っているというのが、正確なところかもしれません。とうに止めてしまった地区もありますから。それでも、仏教王国福井とも称されることがあるほど、浄土真宗と禅宗の信仰にまつわる組織や会がまだあります。信仰は食文化にも深く影響しています。


しかし、こうした古い仕組みや「協力するのがあたりまえ」という感覚が残っているのは、なにも特別なことをがんばったからではなく、世の中の価値観や生活スタイルが変わっていく中、福井県は変わらなかった(変われなかった?)だけなのではないかというのが、私の実感でもあります。


なにしろ、いまだに新幹線もイオンもありません。


流行は3年遅れ、もしくは3年たってもやってこない、という通説がある福井。情報や経済の波にのまれ人々のつながりが分断される事態をなんとか回避し、男性は外で仕組みをつくり、女性は草の根的に協力しあい、家庭や地域をゆっくりと守ってきたのだと、私は考えています。


男女共同参画と言われ、女性の活躍を!と、さかんに言われています。私はそんな中、10年前にフリーランスの健康講師、介護予防運動指導者として独立しました。この3年間は、女性の地位向上や自己研さんを目的に古くから活動してきた地元の婦人部組織にも所属し、会長や役員を務め、行政のごみ問題懇話会や健康づくり推進協議会、町内の新幹線関連の会議にも出席してきました。


その中で、感じるのは、福井の女性は、これまでも影のリーダーだったということです。そして、女性は家庭と社会の太陽なのです。夫(男性)に仕えているようでいて、しっかりと影で男性を動かしてきたのが福井の女性なのだと言ったら、語弊があるでしょうか?福井県出身の、アパホテルの元谷 芙美子社長のような強さとしたたかさが、裏に隠れているのだと知ったら、恐れられるでしょうか?


つまり、表に立つだけがリーダーではないということです。もちろん、意見や主張をまっとうに出来る場所にどんどん出ていくという選択もあっていい。これからは、ガチガチに固めたトップダウンの組織ではなく、多様性を理解し、共感性を生かし、人と人、組織と組織をつなげ、ゆるやかな水平思考のできる人が真のリーダーとなり、時代の地殻変動にも長く耐え、社会を動かす時代が来ているのだと考えます。それはまるで、「人体」という組織の本質のようであります。人体はすでに脳神経系からの指令だけで動くようなトップダウンの組織でないことが、筋骨格系や消化器系の研究から明らかになっています。



目には見えない資本がある

・大雪が降れば、買い物に行けそうもない一人暮らしのお向かいさんに、おかずをつくって持っていく人がいます。

・手に入っためずらしい土産品を、お世話になった人やお隣さんに配って回る人がいます。

・畑で採れた野菜を、軽トラに積んで、畑を持たない人に毎年タダで配って回る人がいます。

・おなじ宗派の同業が持ち回りで宿となり、毎月集まりお経を読み、茶菓子やお土産を用意して歓談する風習があります。

・年末になると、買えばとんでもない価格の海産物を、トロ箱いっぱいに詰めて持ってきてくれる人がいます。

・肩を傷めて動かせないのに、そんな腕で、大根を千切りにつきおろし、あま~い甘いコクのある切り干し大根を「これ食べて」と何袋も持って来てくれる人がいます。

こうした地元の先輩のおんちゃん、おばちゃんを観察するうち、分かったことがあります。それは、お金ではない、別のものが流通しているのだということです。福井はいまだにどこにあるのか忘れられる日本の秘境。ずっと秘境であってほしいな(←個人的希望)





目には見えない資本。これを社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)と言います。


※ソーシャルキャピタルのことはこちらが参考になります。
「健康を決める力」聖路加国際大学 中山和弘 

http://www.healthliteracy.jp/shimin/post_15.html



根強くもゆるかやに残るつながりの力は、親や祖父母の代から続いてきた、目に見えず、お金にも換算できない、助け合いのやり取りがあったからこそ。いくつになっても働ける、誰かの役に立ちながら生きていける、そんな働く喜びが人生の質を決めます。しかし、このような、ひと肌のぬくもりが感じられるつながりを、車で移動しなければならない福井の田舎の環境下で、いつまで続けられるでしょう。年をとると夜目が効かず、夜の運転はとても怖いという人がいます。「もう歳だから、免許証は返納しなさい」と言われます。免許返納をきっかけに外出が減って介護施設を利用するようになる人を度々見かけるようになりました。文化を守り育てることとあわせ、商業地の場所や交通網を考えることも同時に必要だということです。福井はちょっと出れば必要なものが手に入る、「本当の田舎」の無いコンパクトな街なのが特徴ではありますが、暮しの現状をよく分かっている人に意見を集約していただき、この課題にも引きつづき取りくんでいただきたいと願います。

そして、そして。



あなたがいてくれるから、私は幸せ

たとえ何もできなくても、そこにいてくれるだけで安心する、あなたがいてくれるから私は幸せなのだという、存在の仕方もあります。人生の終わるその日まで、ずっと、ずっと、笑顔で、集い、志を共にして、一緒に喜んで働ける仲間がいてくれたら、それだけで私は幸せ。集落の裏道を歩いているだけで、大事な人の名前を見るだけで、誰かに守られている実感とともに、底知れぬ幸せを感じることが出来ます。吹きわたる風を感じるだけで、全身が沸き立つような幸せの感覚が、体を包みます。


満たされていると、ハングリーになれない?意欲が湧いてこない?いえいえ、満たされているからこそ、誰かに与えることが出来るのです。本能で、未来を産み育てようとする、母性の力、なのではないでしょうか。10秒ポーズ=「10秒とまるだけ」の健康体操は、10数えるごとに新しい人生の始まりを迎えようとするものです。不安や焦りで時に乱れとぶ意識を日々体にひきもどし心身一体にします。軸をつくり、今なすべきことに一心にとりくむことができるよう体の再教育をするものです。体が満たされている、これは間違いなく私の体である、という感覚が、健康な心と行動を育んでくれます。


最後になりましたが、4年間、ボディ&ヘルスのコーナーの、私たちの精一杯のコラムを、読んでいただいてありがとうございました。

福井、そして日本中の皆様の、ご健康と、言葉に言い尽くせないほどの幸せを、福井の田舎の片隅より、お祈り申し上げます。

福田 裕子
福田 裕子Yuko Fukuda
コラム「ボディ&ヘルス」担当

<理学療法士。働くひとの健康支援 Soleil スタジオ ユウ代表> 
京都大学医療技術短期大学部理学療法学科・放送大学教養学部発達と教育専攻卒。
24年間でのべ7万人以上の中高年の介護予防運動やリハビリを指導。
2007年 フリーランスとなり介護予防事業に従事。リハビリにも使われる運動療法を運動が苦手な人むけにシンプルにアレンジした運動学習ドリル10秒ポーズを考案。
2014年 企業むけ研修を本格的に開始。腰痛予防体操などを通じ「自分のからだは自分で守る」自己管理意識を高め、企業の健康風土づくりを支援。「痛みが楽になる、体が軽くなる、温かくなる、指導がわかりやすい」と定評がある。高齢者リハビリテーションの経験から、齢をとるとみじめだという意識を変え「この体で生きてきてよかった」と人生最後の時に感謝できるような社会づくりを目指している。

[ホームページ] https://fukuda-yuko10.themedia.jp/

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